今や、どこの小売店に言っても必ず「ポイントカードはお持ちですか」と聞かれます。私はカードケースがかさばるのでポイントカードを持つのは好きではないのですが、お得に買物ができるということから多くの人にとっては魅力的なものだと思います。一部の小売店では、通常よりも多くポイントを貰える「ポイント2倍デー」を実施している場合があります。今回はその背後にあるマーケティングの意図を探っていきましょう。
小売店は、ポイントカードをマーケティングに利用している
最初に、ポイントカードについて簡単に解説しておきたいと思います(説明不要かもしれませんが)。小売店などが発行しているポイントカードは「お買上金額に応じて、一定のポイントが貰える」という仕組みです。多くの場合は利益の1%程度がポイントバックされるケースが多いようです。
売上の一部をポイント還元しているということは、実質的に商品を値引き販売しているのと変わりません。ではなぜ小売店はこのようなサービスをこぞって実施しているのでしょうか?主に次のような理由が考えられます。
- ポイントを使うためにお店に再来訪してほしい
- ポイントカードを作るときに顧客の個人情報を取得し、マーケティングに活用する
小売店のポイントカードは通常、一定上のポイントが貯まらないと使えるようにはなりません。そのため必然的に顧客は同じ店に繰り返し通う必要が出てきます。
また、ポイントカードを作るときには、電話番号や住所、年齢など個人情報を入力しなければいけません。小売店の側はポイントカード交付を通じて顧客の個人情報を取得し、「どんな層の顧客が多いか」、「どんな属性に当てはまる人が、たくさん買い物をしているか」といった情報を調べていると考えられます。
ポイント2倍デーが実施される理由
では続いて、ポイント2倍デーの利点について考えてみましょう。多くの企業は、次のような理由からポイント2倍デーを実施していると考えられます。
- ほかの小売店のポイントカードと差別化するため
- 雨の日など、客の入りが悪い日の集客を増やすため
今やポイント2倍デーを実施している小売店は少なくありません。ですから単にポイント2倍デーを実施するだけでは差別化にはならないともいえますが、逆に言えば「やらないとほかのお店のほうがお得だと思われてしまう」ために実施している店舗もあるでしょう。
「雨の日にポイント2倍」は、よくドラッグストアーなどで見られるサービスです。ほかにも、店名との語呂合わせになる日、毎月同じ曜日など、特別な日を選んでポイント2倍にしているお店は多く見られます。
ポイント2倍デーは、顧客の再来訪を促す
以上がポイントカード、及びポイント2倍デーに関する一般的な解釈ですが、私はこれに加えてもうひとつ、重要なことがあるのではないかと思っています。そう考えたきっかけは、先日ある小売店を訪れ、レジに並んでいるときに見た光景からでした。
そのとき、その小売店はたまたまポイント2倍デーでした。お客の一人が「ポイントを使いたいです」と店員に申し出たところ、店員は「ポイント2倍デーですがよろしいですか?」と応えたのです。私はその光景を見て「なるほど」と思いました。
一部のポイントカードは、ポイントを現金代わりに使ってしまうと、そのときの買い物自体に関してはポイントが付きません。そして、ポイント2倍デーは、ポイントを「使うよりもためた方が特になる日」です。当然「ポイント2倍デーですがお貯めしなくてよろしいですか?」と尋ねられれば「もったいないからポイントを使うのは次回にしよう」と考える人も多いはずです。
つまり、ポイント2倍デーを設けることで顧客にポイントを使う機会を限定させているのです。ポイントを使うためには、ポイント2倍デー以外の日を選んでお店に再来訪するしかありません。このようにポイント2倍デーがあることで顧客がお店に再来訪するきっかけを作っているのです。
このときのマーケティングにかかる費用は、顧客ひとりひとりでみると、買い物1回分の1%程度、つまり数円~数十円しかかかりません。たったそれだけで再来訪の機会を作れるのなら安いものでしょう。
効果測定しづらいのが課題
こうしたポイント2倍デーを使ったマーケティングには課題もあります。効果を測定するのが容易ではない、ということです。たとえば、店員さんも「今日何人のお客様に『ポイント2倍デーですがお貯めしなくてよろしいですか?』といったか?」なんてことを毎回覚えてはいないでしょう。そして、「誰が同じ問いかけをされ、実際に使うのをやめた顧客は何人いたか?」を計測するのも簡単ではありません。
効果測定の面において課題が残りますが、ポイント2倍デーのマーケティングは圧倒的に低コストで手軽にできるメリットがあります。小売業にとって非常に有効な手段であるのは間違いないでしょう。