けものフレンズ2話感想その11:初見時に抱く「不安な気持ち」の正体とは?

 

前回記事:【2話 その10】アニメ感想「けものフレンズの謎」:コツメカワウソの「好きなこと」について

 

【Aパート 日向ぼっこをしながらジャガーを待つ2人】

川を渡りたいかばんちゃんとサーバルは、コツメカワウソから聞いた情報を元に川を渡してくれるという「ジャガー」が現れるのを待つことになります。

 

ここでコツメカワウソは、驚愕の「遊び」を披露します。なんと「左手にある石を投げて右手で受け止めるだけ」という、今時幼稚園児ですらしないような何の面白みもない、しょうもない「遊び」を始めるのです。

 

ところが、驚くべきことにサーバルがこの「遊び」に興味を示し「なにそれ!楽しそう!私もやる!」と言い出します。普通の解釈では、なぜこんなつまらないことに夢中になるのか完全に理解不能でしょう。

 

視聴者の「IQを下げる」コツメカワウソ

このとき、このシーンを見た視聴者は「ああ、けものフレンズというのは、こんな遊びにも夢中になるような純真なフレンズたちが触れ合う作品だったな」と考えるようになります。しかし、今まで考察してきたようにけものフレンズという作品は「最初からこうだった」わけではありません。

 

第1話の時点では、かばんちゃんの成長を描く内容であり、2話のコツメカワウソ出会うまでのシーンもラッキービーストとサーバルの掛け合いを始めさまざまな謎や伏線をはらんだストーリーを展開してきています。ところが、コツメカワウソ出会い、彼女が滑り台で楽しそうに遊ぶ姿や、石でお手玉をする光景を見せられることによって、あたかも最初から、「純真なフレンズたちが触れ合うアニメだった」かのように印象を操作されているのです。

 

そのように考えると、こういったシーンを「IQが下がるシーン」と呼ぶファンたちの表現は、まさに適切なものだったと言わざるをえないでしょう。けものフレンズは明らかに演出上の意図を持って、こういった「IQが下がるシーン」を挿入して視聴者の印象を操作しています。では、なぜ視聴者の「IQを下げる」必要があるのでしょうか?

 

初見時に生まれる「不安な気持ち」の正体

一般的には、こういった「IQを下げる演出」はアニメや漫画において珍しい手法ではありません。銀魂・ルパン三世・シティーハンターのようにシリアスなシーンとギャグシーンを織り交ぜる作品は無数にあります。シリアスとギャグ、どちらをメインにするかによって「シリアスなシーンをなごませるためにギャグシーンを入れる」か、「ギャグの中にシリアスなシーンを挿入して、展開にメリハリをつける」かの違いがあるだけです。

 

けものフレンズが特殊なのは、シリアスとギャグを織り交ぜていながらもシリアスシーンをシリアスだと感じさせていないところです。シリアスとギャグが織り交ぜてある作品の場合、通常はどこがギャグシーンで、どこがシリアスなシーンなのかすぐに判別できるようになっています。ところが、けものフレンズではギャグシーンは比較的わかりやすいものの、シリアスなシーンはどこがシリアスなのか大変わかりにくくなっています。

 

そのため、けものフレンズを見た人は、ギャグシーンでは笑ったり、安心感を得るものの、シリアスなシーンではそのシーンを自分の中でどう解釈したらいいかわからず、頭を悩ませることになります。この「シリアスシーンをどう解釈したらいいかわからない、もどかしい気持ち」こそ、けものフレンズ視聴者の多くが初見時に抱いた「いいようのない不安な気持ち」の正体です。

 

IQを下げる演出と、シリアスさを感じさせないシリアスなシーン。これらが生み出す緩和と緊張の波こそがけものフレンズという作品の本質だといえるでしょう。

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