けものフレンズ2話感想その9:コツメカワウソの「たーのしー!」が及ぼした恐るべき影響

 

前回記事:【2話 その8】アニメ感想「けものフレンズの謎」:ジャングルの奥地へ進む様子に見る演出方法

 

【Aパート 行く手を遮る川の登場】

 

サーバル:ねぇボス、こっちであってるの?

かばんちゃん:道がどんどんなくなっていくね。

ラッキービースト:まかせて。ぼくの頭にはパークの全地形が入ってるんだ。この茂みを超えればあとは楽な道だよ。

 

すでに見てきたように、ラッキービーストはかばんちゃん以外のフレンズとは会話をしません。このシーン、ラッキービーストはかばんちゃんとサーバル、どちらの問いかけに応えたといえるでしょうか?かばんちゃんの台詞のあとで喋っているため、かばんちゃんの質問に答えたともとれますが、かばんちゃんのセリフを除いて、サーバルのセリフに対して返事をしたとみても意味は通じます。というよりも、かばんちゃんのセリフは合いの手と考えるべきで、話の内容としてはむしろサーバルのセリフに対する回答と見るべきでしょう。

 

つまり、「フレンズとは会話をしない」、「かばんちゃんに対するガイドを行う」という役割の中で、可能な限りサーバルともコミュニケーションを取ろうとしているのではないかと考えられます。このことは、最終話まで見続けていけば後に裏付けとなるシーンが出てきます。

 

橋の損壊から感じられる年月の経過

ラッキービーストは「まかせて」と発現していますが、この直後茂みを抜けた一行の前には大きな川が横たわっていました。かばんちゃんとサーバルはラッキービーストを見ますが、目を白くしてフリーズしてしまっています。これもラッキービーストが正常に稼働せず、故障していることを示すシーンです。

 

本来であれば、ラッキービーストには過去のパークの全地形が記録されていたのでしょう。しかし、年月の経過や自然の働きによって変化した地形には対応していないことがわかります。このことから、ラッキービーストがパークに配備されてから、すでにある程度の年月が経過している可能性が読み取れます。

 

2人の行く手を遮る川の中にも、破損した橋の破片らしきものがいくつも転がっています。おそらく川の反乱によって元々かかっていたであろう橋が破損したのだと考えられますが、ラッキービーストがフリーズし、川を渡ることもできない2人はどうするべきか頭を悩ませることになります。

 

コツメカワウソの登場

川を渡れずに困っている2人の前に、2話の重要キャラクターのうちの一人である「コツメカワウソ」が登場します。このコツメカワウソは、けものフレンズという作品について考える上でも非常に重要なキャラクターです。まずはコツメカワウソとかばんちゃん・サーバルの掛け合いを見ていきましょう。

 

2人と出会ったとき、コツメカワウソは川の中で滑り台のような形になっている、橋の破片らしきもので遊んでいました。ここで悪名高い(?)「たーのしー!」のセリフが出てきます。コツメカワウソの「たーのしー!」というセリフは、サーバルの「すっごーい!」と並び、ファンの間でけものフレンズを象徴するセリフとして扱われています。

 

「たーのしー!」が視聴者に与えた影響

このシーンで、橋の破片を滑り台代わりにして繰り返し滑り降りるという、まるで子ども騙しのような遊びを楽しそうに繰り返していたことから、コツメカワウソは一般的に「子どものように純真で単純なキャラクターである」と思われてきました。

 

「紙飛行機のような、単純な玩具に感動するサーバル」と「滑り台のような、子どもの遊びで楽しそうにしているコツメカワウソ」。主要な登場人物と、2話で先に登場した重要登場人物がこういった一見幼稚、単純に見える傾向があったことから、多くの視聴者は「ああ、このアニメはこういう感じなんだな」という印象を受けたことでしょう。

 

ここでいう「こういう感じ」とは、「子どものように純真な心を持ったフレンズたちが、ほのぼのと触れ合うアニメ」という意味です。このシーンを見た視聴者の多くが「IQが下がる」という表現で感想を言い表していますが、これは要するに「登場事物たちに感情移入して、自分も一時的に純真な子どものころの心にかえった気分になれる」ということを意味していると考えられます。

 

コツメカワウソのセリフが、作品全体の印象を決定づけた

本来、このコツメカワウソの登場シーンは、けものフレンズ全編の中ではほんの一部のシーンに過ぎません。しかし、その影響力は視聴者の「作品全体へのイメージ」を決定づけるほど大きなものだったといえるでしょう。もし、このシーンがなければ「実はシリアスな作品なのではないか」という印象を抱いたまま視聴を続けた人も多かったでしょうし、この後のフレンズたちの掛け合いに対する印象も違ったものになってきていたでしょう。

 

この「コツメカワウソが滑り台で遊ぶシーン」を見せることによって、けものフレンズは視聴者の「IQを下げ」、この後のシーンを純真な気持ちで見せることに成功しました。つまり、視聴者の気持ちをシーンの挿入によりある程度コントロールしたことになります。また、作品全体についても「ほのぼのした作品である」という印象を強く植え付けることができました。

 

しかし、これだけで終わらないところが、けものフレンズという作品の真に恐ろしいところです。次回は引き続きコツメカワウソのシーンを見ていきながら、このシーンの「裏」に迫っていきましょう。

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Webライター・マーケティングコンサルタントとして活動しています。実務を通じて学んだマーケティングに関するノウハウや最新情報をわかりやすく提供していきたいと思っています。 また、時事に関わるニューズをマーケティング・ライティングといった切り口から解説してみたいと思います。

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