けものフレンズ2話感想その8:ジャングルの奥地へ進む様子に見る演出方法

諸注意

 

前回記事:【2話 その7】アニメ感想「けものフレンズの謎」:アクシスジカの塩を断るサーバルと「すっごーい!」の裏側

 

【Aパート】

アクシスジカと別れたあと、さらに様々なフレンズと出会う一行。出会ったフレンズは順番に、キングコブラ・ミナミコアリクイ・クジャク・タスマニアデビル・エリマキトカゲ・オカピ・・・。

 

サーバル:ここはホントにたくさんの娘がいるね。

かばんちゃん:ホントだね。

サーバル:それにしても、サバンナとはちょっと違った暑さだね。

かばんちゃん:確かに。

 

キングコブラ以下、ほぼ一瞬しか登場しないフレンズが次々に紹介されています。普通に解釈すれば、「じゃんぐるちほーにはそれだけたくさんのフレンズがいる」ということを視聴者に伝えるためのシーンでしょう。あえて深く考察すれば、「これだけのフレンズがいるにも関わらず、誰もかばんちゃんたち一行についてくるものいなかったのはなぜか?」という点に疑問が残ります。この点については、このあとコツメカワウソが登場するシーンでまた触れたいと思います。

 

次に、サーバルとかばんちゃんはじゃんぐるちほーの暑さに言及しています。意外にも2人は、さばんなちほーにいるときは(元々そこに住んでいるサーバルは当然としても)暑さに音を上げることはありませんでした。しかし、今回は初めてちほーの気候が不快な様子を見せています。

 

この後も2人はさまざまなちほーを旅しますが、一部の例外をのぞいて多少の気候の違いは気にする素振りを見せていません。普通であれば野宿するだけでも昼夜の寒暖差が体に厳しいはずですが、そういった様子もほとんど見せていません。このことから、以下のような推測が成り立ちます。

 

  • ジャパリパークの気候は我々の世界とは異なる
  • 「フレンズ」は、通常の動物よりも気候の変化に強い

 

現時点ではまだ証拠となるシーンが少ないので、この点については今後また関連するシーンが出てきたら考えることにしましょう。

 

【Aパート ツルに絡まれるサーバルとラッキービースト】

じゃんぐるちほーの説明をしながら進行するラッキービーストは、後ろ向きに歩いています。木の足場が壊れている位置ではジャンプするなどしていることから、何らかの方法で周囲の地形を把握していると推測されます。

 

ラッキービーストはじゃんぐるちほーの気候的特長について「樹木が層をなしていること」、「ツルを持つ植物が多いこと」の2点を挙げていますが、その直後サーバルがツルに引っかかって宙吊りにされてしまいました。かばんちゃんの助けで事なきを得ますが、その際「器用だね」と言っていることから、サーバルを救出するシーンは描かれていないものの、かばんちゃんが「ツルを解いて」サーバルを救出したのではないかと考えられます。

 

おそらく、サーバルは「(自分だったら、ツメでツルを切り裂いて脱出するところを、解いて助けてくれたから)器用だね」といったのではないかと思います。本来であれば「手先の器用さ」というかばんちゃんの特長を説明するシーンですが、あえて描写は省かれています。「ツルが多いのが特長といってるそばからサーバルがツルに絡まれる→ラッキービースト本人も絡まれる」というギャグシーンをテンポよくつなげるためでしょう。

 

ジャングルが深くなっていくことを表す3つのシンボル

3人はさらに鬱蒼とするジャングルの中を進んでいきます。ここまでの一連のシーンを見ると、

 

①たくさんのフレンズとの出会い
②サーバルによる「暑さ」への言及
③ラッキービーストによる「ツルが多い」ことの説明
④ラッキービーストの足元の「木の足場」が映る
⑤足元の木の足場が消える
⑥かばんちゃんの「鬱蒼としてきたね・・・」というセリフ
⑦ツルに絡まるサーバル、ラッキービースト

 

という流れになっています。⑥のかばんちゃんのセリフに注目すると、なぜこのような場面展開になっているのかが理解できます。

 

もし、①~⑤までのシーンがなく、いきなりかばんちゃんが「鬱蒼としてきたね・・・」とつぶやいたとしたらどうでしょうか?かなり唐突な印象を受けるはずです。①~⑤のシーンは、このセリフに重みを持たせるために必要なシーンだったのです。

 

まず、①のフレンズが大量に顔見世するシーンを入れることによって、その先で「フレンズがいないほど植物が生い茂っているところにやってきた」ということを印象づけることができます。

 

②のサーバルの暑さへの言及は、その後のラッキービーストのツルに関する説明を引き出すための「フリ」です。このセリフがないと、ラッキービーストが突然じゃんぐるちほーの説明を始めることになり、不自然です。

 

③のツルの説明は⑦のギャグシーンへのフリです。ただし、「ツルに絡まってしまうほど鬱蒼としたところへやってきた」ということを強調する意味もあります。

 

④のラッキービーストが解説をしているシーンでは、まだ木の足場が映っていますが、⑥のかばんちゃんのセリフの直前にあたる⑤のシーンでは、もう足場が消えています。これにより「足場がなくなるほど鬱蒼としたところへやってきた」ということを現しているのです。

 

 

「鬱蒼としたところへやってきた」ということを表現する方法はいろいろあります。たとえば、以下のような方法が考えられるでしょう。

 

  • 映像による表現(植物の量を増やす、暗くしていく)
  • 音による表現(BGM、SEなど)
  • セリフによる表現(キャラクターに「鬱蒼としてきた」と喋らせる)

 

通常は、これらの方法をいくつか組み合わせ、段階的に実施していくことで徐々に「鬱蒼としていく」光景を表現することになるでしょう。たとえば、徐々に画面を暗くしていき、BGMも小さくしていくといった演出が取られるが多いと思います。

 

けものフレンズのこのシーンにおいては、こうした直接的な演出方法ではなく、より抽象的な演出方法がとられました。「鬱蒼としてきた」という状況の変化を「ひと気のなさ」、「ツルの有無」、「足場の有無」という3つのシンボルで段階的に現し、最後にかばんちゃんのセリフでそれを視聴者に共通認識として受け入れさせるという表現方法をとっています。

 

一見シンプルに見えるシーンでも、こうした抽象的な演出方法を忍ばせているあたりが、この作品の油断できないところだといえるでしょう。

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