ポプテピピック第7話は、さまざまな意味で視聴者に大きなインパクトを残す回となりました。どうしてもアニメオリジナルパートに注目が行きがちな今回のお話ですが、ほかにも面白いパートが多数揃っています。順番にどういった点が面白いのか、その秘密を探っていくことにしましょう。
ポプテピピック第7話「#7 ヘルシェイク矢野」の内容まとめ
キャラクターボイス
Aパート: こおろぎさとみ(ポプ子)、矢島晶子 (ピピ美)
両者の共演作品:
http://lain.gr.jp/voicedb/individual/costar/74/cowork/37/page/1
Aパート: 森久保祥太郎(ポプ子)、鳥海浩輔 (ピピ美)
両者の共演作品:
http://lain.gr.jp/voicedb/individual/costar/370/cowork/645/page/1
ポプテピセラピー
気分が落ち込んでいるくちばし男に、ポプテピセラピーを勧めるポプ子。促されるままにポプテピピックの単行本を読むものの、「つまんね」という感想を漏らすくちばし男を、ポプ子はアンチだと認定する。
ヌートリア
アンチをあやし、寝かしつけようとするポプ子。そこに信者が現れ「アンチなんかに優しくするな」と怒りの声を上げる。それを受けたポプ子は、次に信者をあやそうと子守唄を歌う。何のアンチと信者かと尋ねるピピ美に、ポプ子は「ヌートリア」と応える。
#7 ヘルシェイク矢野
「進路相談でパラディンになりたいって言ったら怒られた」と、ポプ子はピビ美に愚痴る。しかし、ピピ美はヘルシェイク矢野にまつわる壮大なストーリーを思い浮かべていた・・・。
AC部の2人による紙芝居「感動ドキュメンタリー ヘルシェイク矢野」が演じられる。
あこがれの舞台、東京・ビッグ武道館での初ライブを控え、出番を待つギタリストの矢野。そんな彼のもとにマネージャーから「電車が遅れてほかのバンドメンバーがライブに間に合わない」との知らせが届く。
ほかのメンバーが到着するまでの間、お客さんをつなぎとめるため矢野は高速ギターソロに挑戦する。お客さんを飽きさせないよう、限界を超えた高速ピッキングを披露するが、そのせいでギターの弦が切れるというハプニングが生じてしまう。
しかし、矢野は残ったギターの弦を使ってギターソロを継続。一本、また一方と徐々に使える弦が減る中、矢野はピッキングを続けていく。その様子を見ていたマネージャーは、おもむろに叫ぶ。
「やつは地獄を揺さぶっておる。地獄(ヘル)をゆらす(シェイクする)男・・・『ヘルシェイク矢野』じゃ!」
マネージャーの叫びが周囲に広がったのか、いつしか会場は「ヘルシェイク」コールに包まれる。バンドメンバーが会場に到着することはついになかったが、矢野は会場を埋め尽くすヘルシェイクコールに送られ無事にライブを終えた。
こうした壮大なストーリーを思い浮かべていたピピ美の頭に、ポプ子の話は一切入っていなかった。
きょうしゅうちゅう
「マリオカート」や「タイトーチェイスH.Q.」を思わせる画面で、運転免許教習中のポプ子は、前方に「サブカルクソ女」が乗る車を発見する。教習中にもかかわらず前方の車に追突を繰り返すポプ子。さらに前方からは、「UNDERTALE」のMettatonに扮したピピ美が登場。サブカルクソ女が乗る車を攻撃し、撃破することに成功する。ポプ子はピピ美にお礼を言う。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
https://undertale.jp/
処刑
いないないばあを、もったいつけながら可愛らしく披露するポプ子。ピピ美も「非の打ち所がない可愛さだ」と絶賛する。直後、すぐ側に捕らえていた男の処刑を命じる。ポプ子も笑顔でハートマークを作り、ゴーサインを出す。
赤ちゃんになっちゃった
なぜか赤ちゃんになってしまったポプ子は、ピピ美と同じ高校に行けないのではないかと不安を覚える。ピピ美は、「何年でも待っててやる」とポプ子を慰める。ピピ美の優しさにポプ子は涙し、バラの花のつぼみもキレイな花を咲かせる。
ポプテピクッキング 100%ハンバーグ
今回のメニューは合いびき肉を使わない100%ハンバーグ。鉄板で焼き、ひっくり返すと「ぺったんこになったマナティ」になる。
100%ハンバーグのレシピ
マナティ ・・・100g
パン粉 ・・・ひとつかみ
たまねぎ ・・・中1個
こしょう ・・・少々
ぺったんこになったマナティ
マナティ ・・・300g
パン粉 ・・・ひとつかみ
たまねぎ ・・・中1個
こしょう ・・・少々
JAPONMiGNON
ティボ・トレスカ氏「フランスでは 南部と北部でまったく気候が異なるんだよ 北部は雨が多くて寒いけど 南部は晴れが多くて あったかいんだ 僕は北部出身だから 自虐ネタにしてるよ」
フランスのキレイな町並みを背に、記念写真を取るポプ子とピピ美。しかし、それは天気の良い南部の風景を映した看板で、実際に彼女たちがいるフランス北部の天気は雨だった。
エクストリームチャリ座り
「エクストリームチャリ座り」と称する、離れた場所からジャンプして自転車に座る遊びをするモブ男。ところが、自転車のそばにいたポプ子はモブ男が座るより前にサドルを引き抜いてしまう。当然、モブ男は自転車の支柱に股間が突き刺さり悶絶。ポプ子は「てへっ!」と可愛く頭を掻いてごまかす。BD版ではさらに可愛さが強調された絵柄に変化する様子が描かれる。
当て身投げ
ピピ美に頭をなでてもらいご満悦のポプ子。同じようにピピ美をなでかえそうとするが、ピピ美はポプ子の手を掴み3連発の当て身投げを食らわせる。
釣り その1
海岸で釣り竿を下ろすピピ美。しかし一向に魚は釣れない。ピピ美のボヤキを聞いたポプ子は、自ら魚となってピピ美の釣り針に食らいつく。
釣り その2
「釣り その1」の続きが描かれる。ポプ子は無事陸上へと帰ってきた様子で、ピピ美はその後大きな魚を釣り上げる。釣り上げた魚の顔を見て「ピピ美ちゃんそっくり」と指摘するポプ子。しばらく笑い続ける2人だったが、突如ピピ美が「なんだと?」と真顔に。
きょうしゅうちゅう その2
レースゲームを彷彿とさせる画面で、自動車免許の教習をしているポプ子は、突如後方から亀の甲羅で攻撃される。道路から外れ、脇の草むらに突っ込んだポプ子の車は、ピピ美(LV.14)とエンカウント。ポプ子(LV.14)は数あるコマンドの中から、「たたかう → ちいさくなる」を選択する。ピピ美の反撃は「ヘルサザンクロス」。ポプ子は一撃で倒され、めのまえがまっくらになってしまう。
実は、一連のストーリーはポプ子がプレイしていたゲームの画面だった。負けたことに立腹したポプ子は「二度とやらんわこんなクソゲー」とコントローラーを投げ出してしまう。しかし、しばらくすると再びコントローラーを手に取りゲームを始める。
だが、結局また最後にはコントローラーを投げ出してしまうのだった。
より詳しい流れをご確認したい方は、本編を視聴するか、もしくは以下のリンク先を参考してください。
http://anicobin.ldblog.jp/archives/52990149.html
パロディの元ネタは以下のリンク先が参考になります。
http://matomame.jp/user/FrenchToast/2ae896205010797fd939
ポプテピピック7話のポイント
オリジナルパートをAC部が担当
これまでボブネミミッミを担当していたAC部が、7話にて初めてアニメオリジナルパートを担当することになりました。このパート冒頭と末尾のポプ子・ピピ美を見てもらえばわかるのですが、いつものボブネミミッミのような崩れた絵柄で描かれていません。あくまで「ポプテピピックのポプ子とピピ美」であり、「ボブネミミッミのボブ子・ミミ美」ではないということ、つまりはこのパートがボブネミミッミではなくアニメオリジナルパートだということを暗示しているのです。
「アンチ・信者」を取り上げたネタ
今回は、冒頭のポプテピセラピーやヌートリアを始めとして、「アンチ」と「信者」を取り上げたネタで固められています。ここでいうアンチと信者とは、特定の対象に対する反発者と信奉者を意味するネットスラングのことです。
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%81
http://dic.nicovideo.jp/a/%E4%BF%A1%E8%80%85
ポプテピピック7話の演出意図を考察
今回のテーマは「愛情と憎しみ」か?
ポプテピピックは原作においても、アンチと信者を取り上げたネタが複数存在します。アニメにおいても、4話に登場するフェルト人形のダンス「LET’S POP TOGETHER」の歌詞がアンチと信者を風刺する内容になっています。
「LET’S POP TOGETHER」及び今回のヌートリアのネタがわかりやすいのですが、ポプテピピックは一貫してアンチにも信者にも、中立的な態度を取り続けています。アンチに逆反発するでもなく、信者に媚びるでもなく、どちらも同じく作品のファンとして適度に愛し、適度にあしらう、といったスタンスです。
よく「愛の反対は無関心である」と言われることがあります。これは「ある対象を嫌いになるということは、それだけその対象に関心を持っている証拠である。関心があるという点に注目すれば、愛情も憎しみも変わりがない」という考えに基づく発想です。この考えによるならば、愛情及び憎しみの対義語は無関心になるわけです。
ポプテピピック、そしてその作者である大川ぶくぶ氏としては、「自分の作品に関心を持ってもらえるだけありがたい」という謙虚なスタンスを表しているのかもしれません。
愛と憎しみが持つさまざまな側面を風刺
それ以外のネタについて、「愛情と憎しみ」という視点を持つとどのように解釈できるのか検証してみましょう。2パートある「きょうしゅうちゅう」のネタでは、ポプ子の嫌いな「サブカルクソ女」が登場します。ポプ子は憎しみを抑えきれず、クソ女を攻撃しますが、これはゲームであることが後に判明します。ポプ子はゲームのことも「クソゲー」と呼び、負けるとコントローラーを投げ出しますが、しばらくすると再びプレイを再会します。これこそ「愛情と憎しみは本質的に同じである」ということを具体的に表す良い例でしょう。
「処刑」のネタでは、ポプ子の可愛い姿を見て満足したと思われる男性が笑顔のまま処刑されます。これは「愛するものからはどんなひどいことをされても構わない」という愛情を風刺したものでしょう。「当て身投げ」と「エクストリームチャリ座り」のネタもまったく同じ構図です。
「釣り」のネタでは、ポプ子はピピ美を喜ばせるため、自ら魚になって釣られます。その後もピピ美が釣りをやめていないことから、この行動はピピ美にとっては「ありがた迷惑」だったのでしょう。その後、ポプ子から「釣った魚に顔が似ている」と指摘されたとき、不快そうにしていたのも同じことです。ポプ子は良かれと思ってしている行動なのですが、すべて裏目に出ています。このように、愛情も表現の仕方を間違えてしまうと相手を喜ばせるどころか逆効果になってしまうこともあります。
「赤ちゃんになっちゃった」と「ポプテピクッキング(100%ハンバーグ)」は少しわかりにくいかもしれません。「赤ちゃん」のほうは、「ピピ美ちゃんと同じ高校に通いたい」というポプ子のために、ピピ美が「何年でも待つ」という愛情を見せようとします。言うまでもなく、そのためにはピピ美は留年を繰り返さざるを得ず、結果的にそれで二人が幸せになれるかどうかはわかりません。
ポプテピクッキングの方は、100%ハンバーグという珍しい料理を作ることに成功したものの、そのためにマナティという希少な動物の肉を使用しなければならないというジレンマをコミカルに描いています。「赤ちゃん」と「ポプテピクッキング」からは、「愛情を示すには何らかの犠牲が必要だが、必ずしも犠牲に見合う結果が得られるとは限らない」という教訓を風刺しているといえるでしょう。