理不尽なシュールギャグとパロディで人気のギャグアニメ「ポプテピピック」。今回はその1話「#1 出会い」の演出方法や制作陣の意図などを考察していきたいと思います。
ポプテピピック「#1 出会い」の大まかな流れと要約
ポプテピピックはギャグアニメです。ギャグはどういったネタをどういう順番で盛り込むか、流れが大事なので本編の流れを振り返っておきましょう。
星色ガールドロップ
http://dic.nicovideo.jp/a/%E6%98%9F%E8%89%B2%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%97
原作で行われた「ポプテピピックの打ち切り→新連載」という嘘ネタをアニメで再現。
「怒った?」「怒ってないよ」
ポプ子がピピ美を殴る。何回目かに殴ろうとしたところで・・・。
ピピ美「怒っ・・・」
ビーフオアチキン?
飛行機の客室乗務員が、機内食は牛肉(ビーフ)とチキン(鶏肉)のどちらがいいかポプ子に質問。チキン=欧米のスラングで「臆病者」の意味と解釈したポプ子がキレるものの、ピピ美がフォロー。
いっぱいちゅき・・・
ピピ美「私が神だ。なんでも質問に応えよう」
ポプ子「私のことどれくらい好きか教えて」
マントマリオ(スーパーマリオワールド)のパロディ
#1 出会い
「朝寝坊して遅刻しそうになり、パンを咥えて家を飛び出したら曲がり角で人とぶつかって・・・」という漫画・アニメあるある。ポプ子が意識喪失→目覚めを繰り返す内にだんだん関係のないパロディに・・・。
ザ・エンドってね
元ネタは下記の記事を参照ください。
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AD
ボブネミミッミ「みんなのカバッピョ」
アンパンマンに登場するカバオくん(お腹が空いたとき、よくアンパンマンに顔を食べさせてもらっている)のようなキャラが登場。ボブ子とミミ美はサソリを食べさせようとする。
すごい闘志
屋外で鳴り響く稲光にキレるポプ子。その闘志に感心するピピ美。
アサヒスーパードライ
ビールメーカーのCMのモノマネ
カツ丼食えよ
「容疑者」のポプ子をピピ美が厳しく尋問。なぜかカツ丼を食べることも強要。
JAPON MigNON
フランス人のアニメーター、ティボ・トレスカ氏が出演するコーナー
https://www.youtube.com/user/tybouy/
トレスカ氏(Bパート字幕より)「このエピソードでは ステレオタイプをおもしろおかしく描くことで 実際のパリがいうほど魅惑的じゃないかもっていうことを 茶化しているんだ」
フランス旅行に行くポプ子とピピ美。フランス語ができないのでピピ美はジェスチャーで会話しようとするが、相手のフランス人は中指を立てて返してくる。
ボブネミミッミ「怒った?」「怒ってないよ」
1話冒頭の「怒った?」「怒ってないよ」のボブネミミッミバージョン。ミミ美は最後までキレず、ボブ子の行為はエスカレート。最後はたくあんにされ出荷される。
さらに詳しく内容を確認したい方は再度本編をご覧になるか、下記のリンク等を参考にするのもおすすめです。
http://anicobin.ldblog.jp/archives/52749134.html
また、パロディの元ネタについてはネット上で有志の方々が様々な情報提供を行っていますので、確認したい方はそれらの記事も参考にしてみてください。
https://matome.naver.jp/odai/2151526376370649401
ポプテピピック1話のポイント
「星色ガールドロップ」の偽OP
星色ガールドロップは、元々原作漫画で「ポプテピピック打ち切り後に新連載される作品」として紹介されました。実際は、「打ち切りそのものが嘘」というネタだったのですが、それをアニメでも再現した形になっています。
原作既読・未読にかかわらず、第1話の冒頭からまったく違うアニメが始まるという展開は、視聴者に大きなインパクトを与えることに成功しました。また、このネタを盛り込むのなら、このタイミングしかなかったでしょう。
事前告知とは異なる声優の起用
1話Aパートの声優を担当したのは、ポプ子:江原正士氏、ピピ美:大塚芳忠氏です。事前告知では「ポプ子:小松未可子、ピピ美:上坂すみれ」両氏と発表されており、視聴者はここでも大きなショックを受けることになりました。本作の声優に関しては、この後もう一つの衝撃的な事実が判明することになります。
A・Bパートで声優を交代し、同じ内容を繰り返す
Bパートではポプ子:三ツ矢雄二、ピピ美:日髙のり子両氏に声優が交代。Aパートと同じ映像が演じ直されることとなりました。これも今までにない斬新な試みで、多くの視聴者の度肝を抜く演出だったと言えるでしょう。
ボブネミミッミと実写パート
本編とは別にボブネミミッミ、及び実写パートの「JAPON MigNON」が放送されたのも大きなポイントです。こうした原作にはないネタの種類も今後増えていくことになります。
AC部が担当するパート、「ボブネミミッミ」については、詳しく考察した記事があるのでそちらを参考にしてください。
ポプテピピック第1話の演出意図を考察
幅広い視聴者獲得を狙った、パロディネタのチョイス
本編は大きく分けて原作4コマのネタをそのまま再現した部分と、アニメオリジナルの部分に分かれています。今回のアニメオリジナルの部分である「#1 出会い」のパートは、「交差点でぶつかる」というアニメによくある「出会い」のパターンを取り上げたパロディになっています。「君の名は」や「けものフレンズ」を始め、全体的にメジャーな作品のパロディが多めにチョイスされているのが特徴です。
マイナーなネタのチョイスも、「The Elder Scrolls V: Skyrim」、「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」といった海外の視聴者や、「超時空要塞マクロス」、「蒼き流星SPTレイズナー」など昔のロボットアニメファンにも配慮した構成になっており、ディープ・ライトの垣根を超えた幅広い層に対して「ポプテピピックという作品がどういうものなのか」を伝えようとする意図が見て取れます。
実写パートやボブネミミッミは「まだソフト」な構成
1話以降を見てから再び1話を見返してみると、実写パートやボブネミミッミはこの時点ではまだかなりソフトな構成になっていたということがわかります。「JAPON MigNON」のコーナーは、アニメファンでなくても理解できるようなブラックジョークですし、ボブネミミッミは「アンパンマン」というメジャー作品のパロディと、本編で使われたネタのセルフパロディです。視聴者にこれらのコーナーに「慣れてもらうため」に、比較的受け入れられやすいネタがチョイスされていたといえるでしょう。
初見のときには「告知とは違う声優の起用」や「A・Bパートで同じ映像の繰り返し」、「ツッコミきれないほど散りばめられたパロディ」といったそれ以外の要素のインパクトが強すぎてそうした配慮にはなかなか気づくことができません。
1話放映後:視聴者の「見方」はまだ決まらない
ポプテピピックは、今までのギャグアニメにはなかった様々な演出で1話から強烈なインパクトを視聴者に残していきました。しかし、1話終了後の時点ではまだ視聴者の「この作品をどう見るか?」という「作品の見方・姿勢」は定まっていません。「2話も星色ガールドロップから始まるのか?」、「A・Bパートの繰り返しがまた行われるのか?」といったことも、視聴者の目線から見ればまだ確定してはいないからです。
続く2話において、視聴者はポプテピピックに「1話で体験したのと同じような驚き」と、「予想を上回るような更なる驚き」を求めるはずです。それに制作陣がどのように応えたのかは、続く考察で取り上げてみたいと思います。