雪かきの代わりに水やお湯で溶かす方法は本当に危険なのか?

関東など、あまり雪が降らない地域で降雪があると、そのたびに「雪かきの代わりに水やお湯をまいて除雪することはできないのか?」と疑問を投げかける方がいます。そうすると、大抵は雪国に住んでいる方から「雪に水やお湯をかけるのは大変危険な行為だから、絶対にやってはいけない」と注意されます。ネット掲示板やTwitterを始めとするSNSで、毎年目にする定番の光景だと言っていいでしょう。

 

私は毎年2~3m以上の雪が積もる豪雪地帯の出身ですが、10年以上関東で暮らしています。ですから、この「水やお湯をかけて除雪ができないのか?」と疑問に思う気持ちと、「それは危険だからやめたほうがいい」と指摘する方の考え、両方をある程度理解することができます。なので今回は、なぜ東京・首都圏に住む人々が雪を水でとかそうと考えるのか、そしてそれは本当に危険なのかについて考えてみたいと思います。

 

水(お湯)を使った雪かきが危険とされる理由

雪を溶かそうとして水やお湯をかける行為は、よく「スケートリンクを作るのと同じ」と形容されます。水には一時的に雪を溶かす効果があったとしても、夜になって気温が下がれば溶かすのに使った水ごと再凍結してしまうため、翌日にはより滑りやすい「スケートリンク」のような氷の路面ができあがってしまうからです。

 

そのため、普段雪がふらない地方の人がこうした雪かきをしようとすると、たいてい雪の降る地方の人から激しいツッコミを食らうことになります。雪国に住む人々の中には「普通にスコップなどを使って除雪すればいいのに、なぜ水やお湯で溶かすという発想になるのかがわからない」と憤る方もいます。その理由を探るためには、雪が降る地域と降らない地域の気候的な条件の違いを理解しなければなりません。

 

雪国における一般的な雪かき・除雪の流れ

私の故郷は、毎年11~12月ごろから雪が降りはじめます。3月半ばくらいまでは降雪が続き、人里から雪が完全に消えるのは5月ごろ。もちろん、道路の除雪などは行われるので、4月ともなれば一般家庭での雪かきは不要になりますが、およそ1年の半分ほどは雪とともに過ごすことになります。

 

こうした地域では、1日に20~30cmの雪が積もることも珍しくありません。ですから、「決められた場所に積み上げること」が雪かきの基本になります。一般的な家庭は、家の前を通っている道路の脇に、家の周囲に積もった雪を集めます。

 

道路の除雪を行うのは、自治体などの依頼を受けた除雪車です。主に働く除雪車は「除雪ドーザ」と「ロータリー除雪車」の2種類。除雪ドーザとは土木用のブルドーザーと同じように、雪を前方に押す機械です。

 

 

ロータリー除雪車は、回転する羽で集積された雪を吸い込み、上部から飛ばす機械です。

 

除雪ドーザで雪を一箇所に集め、ロータリー除雪車が邪魔にならない道の脇に飛ばす・・・。これが雪国の一般的な道路除雪の流れです。雪の量が多く、春までは溶けることもないため、「地域ごとに定められたスペースに積み上げる」のが基本になります。

 

このように、雪国での雪かきは雪を溶かしたり、消したりするために行うわけではありません。というよりも、事実上そういった方法を取ることが不可能なので、最初から「雪をお湯で溶かす」という考えに至らない人が多いのです。

 

実は雪が降る地域では「水を使った除雪」をやっている

では、雪国では水やお湯を除雪に活用していないのかというと、そんなことはありません。「消雪パイプ」と呼ばれる、地下水を組み上げて道路上にまき、雪を消す仕組みが使われているところもあります。

 

 

「水を道路にまくのが危険なら、なぜこんなものがあるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、消雪パイプは以下の2つの理由から、水を出していても路面が凍結する心配はありません。

 

  • 雪より温度が高い地下水(15℃前後)を使用している
  • 24時間出し続けているので、雪が積もらない

 

関東など雪の降らない地域には、こうした「再凍結しない水を使った融雪の仕組み」はありません。従って、雪が降る地域の人が「水(お湯)を雪かきに使ってはいけない」という場合、その裏には「確実に再凍結を防ぐ方法がお宅の地域にはないでしょ?」という意味が含まれているわけです。

 

雪が積もらない地方では、「雪=溶けるもの」という意識がある?

一方、雪の降らない地方にも独自の「雪かき事情」は存在します。首都圏の場合、大規模な降雪があってもほとんどは一過性のものなので、除雪車が出動するようなことはありません。また、同様に雪国のような「冬の間雪を貯めておく場所」も存在しません。ですから、雪の降らない地域では「雪かき=雪を溶かすこと」を意味します。この点が「雪かき=雪をじゃまにならない場所に移動させること」を意味する豪雪地帯とは明確に違います。

 

首都圏でも、雪が降った後には、玄関や家の前の雪かきをする人々の姿を目にすることができます。彼らも基本的には、邪魔になりにくい道の脇に周囲の雪をよせておくわけですが、心のなかでは「こうしておけば、そのうち溶けて消えるだろう」と考えているわけです。実際、降雪が続くことは稀なので、天気が良ければ数日の間には雪は完全に消えてしまいます。普段から「雪は溶けるもの」と考えて扱っていることが、水やお湯で溶かそうという発想を生み出す原因になっているのではないかと私は思います。

 

「水やお湯をかけて除雪しても問題はない」という意見も

実は、雪国で暮らす人々の中にも「適切な注意を行えば、水やお湯を除雪に利用しても問題はない」と主張する人もいます。Jcastニュースの記事をご紹介しましょう。

 

https://www.j-cast.com/2018/01/23319358.html?p=all

 

「気温が低かったり、雪の量が多かったりする場合では、凍結の恐れがあるのでお湯をかけるのは危ない状況を作ってしまいます。ですが、積もった雪の量が少量で、再凍結の恐れがないような場合であれば、お湯を使って雪を溶かしても問題はないと言えます」

 

「お湯をかけて雪が全て溶けるような場合であれば大丈夫でしょう」

 

リンク先の記事では2人の方の見解が紹介されていますが、「再凍結の恐れがなければ問題はない」という点が共通しています。

 

水(お湯)で雪を溶かす際に伴うリスク

まとめると、水(お湯)を使って雪を溶かす場合、次のような点が問題になると言えそうです。

 

「再凍結しない」とは誰にも言い切れない

家の前の道など、知らない人が歩く場所に水をまいて再凍結したら、事故につながる可能性もあるでしょう。

誤った除雪方法を広める危険性がある

たとえ再凍結の危険性に最大限留意して水をまいていたとしても、それを見た人が「いい方法だ!自分もやってみよう!」と考えて安直に真似してしまう危険性があります。そうなれば、二次的な事故を引き起こしてしまうかもしれません。

目撃者とトラブルになる可能性も

「雪に水(お湯)をまくと再凍結の危険がある」という事実を知っている方も中にはいます。そういった方に目撃された場合、「なんて危険なことをしているんだ!」と怒られる可能性もあるでしょう。仮に自分では再凍結しないよう気をつけておこなっているつもりでも、すべての人がそれで納得してくれるとは限りません。

 

水やお湯を使う除雪方法は効率が悪い

以上のようなリスクを完全に排除するのは難しいでしょう。また、水やお湯で一度に溶かせる雪の量はそう多くはないので、多くの雪が積もった場合にはどちらにしろスコップでの雪かきなどほかの方法と組み合わせなければいけません。

 

結論としては、水やお湯を使った雪かきは「できないことはないが、効率的とは言えない」といえます。プラスチックスコップやアルミスコップなど、数百円程度で手に入る雪かきの道具をひとつ家に用意しておく方がはるかに無難な方法です。

 

雪かきの道具がないときに役立つ代用品まとめ

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Webライター・マーケティングコンサルタントとして活動しています。実務を通じて学んだマーケティングに関するノウハウや最新情報をわかりやすく提供していきたいと思っています。 また、時事に関わるニューズをマーケティング・ライティングといった切り口から解説してみたいと思います。

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