けものフレンズはなぜ人気が出たのか?

2017年1月11日から放送が開始されたアニメ「けものフレンズ」。放送開始からしばらくの間はあまり話題にならなかった作品ですが、その後SNSなどを通じて徐々に人気が広がり「2017年の覇権アニメ」と呼ばれるほど注目を集める作品になりました。

 

「なぜけものフレンズはこれほどの人気を博したのか?」

 

放映当時から様々な説がささやかれてきましたが、個別の要因についてはともかく、人気の理由を体系立てて説明していたものは少ないように思います。そこで今回は、けものフレンズの放送が始まった当時の記憶を遡って、けものフレンズの人気がどのようにして広まっていったのか、その理由を時系列に沿って考えてみたいと思います。

一般的に言われている人気の理由

けものフレンズが多くの人をひきつけた理由として、一般的には次のようなポイントがよく取り上げられています。

キャラクターの魅力

キャラクターデザインがかわいい。裏表のないフレンズたちに癒やされる。

優しい世界観の魅力

他者の長所に目を向け、違いを認める優しい世界観に癒やされる。

セリフの魅力

「すっごーい!」、「たーのしー!」などの定型文が使いやすい。

謎と伏線の魅力

ジャパリパークやフレンズに関する謎や、各所に散りばめられた伏線が気になり、つい見てしまう。

 

人によって表現は異なるものの、「けものフレンズの魅力はどこですか?」と聞かれた場合、おそらくファンの多くはこのうちのどれか、もしくは複数のポイントを上げるのではないでしょうか?

 

確かに、私もこれらがけものフレンズの魅力であるという点には大いに賛成です。しかし、作品自体の魅力的な点=作品が流行した理由と考えていいのでしょうか?たとえば、「魅力的なキャラクター」や「優しい世界観」など、これらの要素のうちのいくつかを備えた作品はけものフレンズのほかにもあります。ですが、そうした作品が皆、けものフレンズのようなヒット作になっているかといえばそうではありません。これらの要素は、けものフレンズという作品を素晴らしいものにした要因ではあっても、流行の理由を説明するものとしては不十分なのです。

 

「流行の過程」を考察する

ここで、劇中でもかばんちゃんが行っていた「料理」を例に考えてみましょう。かばんちゃんは人参や玉ねぎ(と思われる)材料を調理して、カレーを作りました。では、もしかばんちゃんが使ったのと同じ材料を別の誰かが与えられたとしたら、同じようにカレーを完成させることができるでしょうか?もちろん、上手にやればかばんちゃんが作ったのとほぼ同じカレーを作ることも可能かもしれません。しかし、たとえ同じ材料や道具を使っても、「調理工程」が同じでなければ同じ料理は作れないはずです。材料を「切る」、「煮る」といった工程の順番や、材料をカットする大きさなども同じでなければ、まったく別物の料理が仕上がる可能性もあるでしょう。

 

私は、「けものフレンズにはなぜ人気が出たのか?」を考えるには、この料理で言うところの「調理工程」についての分析が不可欠だと思います。それはいわば「コンテンツ流行の過程」とでも言うべきものでしょう。何も定量的なデータたくさん集めて、複雑な分析を行うような必要はないはずです。いくつかの事実を時系列的に確認し考察していくことで、けものフレンズが流行していった過程を明らかにすることができると思います。

 

第一段階:けものフレンズの放送開始から4話放映まで

それではここからは、けものフレンズのTV放送当時の状況を思い返してみましょう。

 

けものフレンズは、2017年1月11日から放送が開始されました。残念ながら、放送当時はさほど話題になることもなく、ネット掲示板やSNSなどの実況もさしたる盛り上がりは見せていません。当時の空気感を知りたい方は、下記のサイトなどが参考になります。

 

http://anicobin.ldblog.jp/archives/50414118.html

 

スタート時の人気がいまいちだった理由は、その「優しい世界観」が退屈だと捉えられてしまったためでした。ゆったりのんびりしたストーリーは「起伏がない」ととられ、他者の良い面に目を向けるフレンズたちのキャラクター像は「子供向けアニメのようだ」と捉えられてしまったのです。

 

しかし、回を重ねるごとにそうした「優しい世界観」に魅力を感じる人やストーリーの背後に潜む伏線や謎に気がつく人も徐々に数を増やしていきました。この後の人気爆発につながる下地が水面下で形成されつつあったわけです。

 

第二段階:2月5日ごろからツイッターで話題が急増

大きな変化が生じたのは、2月5日前後でした。このころを境にTwitterでけものフレンズ関連のツイートが急増したのです。具体的なツイート数の推移などは下記のサイトが詳しいので、興味がある方はご覧ください。

 

https://tsuiran.jp/pickup/20170210/12647

 

リンク先の記事によると・・・

 

アニメ放送は1月10日に始まっている。だが1話~4話の放送日は、ツイートが少ない日で3,000を下回ることも。

1月30日~2月5日のアニメTwitterランキングでも本作は6位。1週間で35,869twしか投稿されておらず、目立ったアニメとは言い難い。

だがオンエア日ではない2月6日にツイートが爆発。その後も数字を伸ばし、8日には6日の2倍以上のツイートが投稿された。

 

第1話の放送日には3,267件だったツイートも、第5話放送日には119,005件に伸びた。2月8日の1日分だけで、およそ12万件に届こうかという勢いだ。

ツイート数が増加した原因について、リンク先の記事では「すっごーい!」、「たーのしー!」などに代表される定型文でのツイートが増加したため、と分析しています。たしかに、こうしたフレーズが使いやすいものであり、このころからSNSなどで拡散し始めたことは事実でしょう。ですが、これはどちらかというと原因というよりも結果といったほうが正確だと思います。

 

つまり、先に「けものフレンズというアニメが面白い!いろんな人にもっとこの面白さに気がついてほしい!」という想いを抱いた人が一定数いなければ、こうしたツイートがそもそも増加するわけがない、ということです。では、その人たちを突き動かしたものは何だったのでしょうか?それこそが本当の意味での「人気爆発の原因」といえるはずです。

 

4話で「不穏の影、闇の深さ」が一気に高まった

けものフレンズの魅力のひとつとして、冒頭で「謎と伏線があること」を挙げました。作品の中身をよくよく見ると、1話の時点からかばんちゃんがヒトであることにサーバルが一切気がつかないなど、不穏の影は見え隠れしています。しかし、この時点ではそのことに気がついた視聴者はそう多くはありませんでした。

 

回を重ねるごとに、徐々に不穏の影・闇の深さをしめすシーンは増えていきましたが、それが一気に色濃くなったのが4話「さばくちほー」です。中でも決定的だったのは、パークの過去を知ると思しきフレンズ「ツチノコ」が登場し、かばんちゃんの正体やパークの過去についての伏線を張っていったことでしょう。

 

ですが、謎や伏線に注目する視聴者が増えたのなら、「なぜ定型文のツイートが増加したのか?」という疑問は残ります。これは私の推測ですが、「謎や伏線について、視聴者が考察を行い、SNSで情報交換を行う過程で定型文などのゆるいツイートも増加した」のではないかと思います。

 

謎や伏線についてのツイートは、けものフレンズを見ている人でなければ理解できません。しかし、定型文のツイートであれば、作品を見ていなくてもなんとなく理解できるはずでず。つまり、ファンの間で作品の考察と情報交換のためのツイートが増加し、それと並行する形で増加した定型文などのゆるいツイートが、新規視聴者の獲得を促したのではないかと思います。

 

第三段階:ハッピーエンドを期待する視聴者の想いの高まり

けものフレンズはその後も順調に視聴者を増やしつつ、物語はクライマックスに向けて進展していきました。ここで再びその人気に質的な変化が訪れるフェーズが訪れます。

 

象徴的な出来事は、ニコニコ動画で行われたけものフレンズ11話の生放送において、アクセスが集中し一部ユーザーが視聴できない状態になってしまったことです。事件の詳細については下記のサイトを参照してください。

 

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1703/23/news164.html

 

 ニコニコ生放送で本日(3月23日)23時より放送が予定されていた「けものフレンズ」第11話ですが、放送が始まっても「アクセスが集中しております」とのエラーメッセージが表示され、視聴できないフレンズが続出しています。最終話まで残すところあと2話、事前の地上波放送などでも期待が高まっていただけに、アクセスが一気に殺到したものとみられます。

 

これはけものフレンズの人気が高まり、視聴者が非常に多くなったことをしめすものですが、同時に「最終回に向けて、視聴者のボルテージが上がっている」ことをしめす出来事でもあります。

 

先にご紹介したけものフレンズの魅力に含まれる「キャラクターの魅力」と「ストーリーの魅力」。これらは視聴者に「どうか物語がハッピーエンドで終わってほしい」という期待を強く抱かせることになりました。このころには大半の視聴者は、かばんちゃんやサーバルを始めとする純真で優しい登場キャラクターたちに深く感情移入しており、またフレンズ同士が助け合って暮らすけものフレンズの世界観に毎回「癒やし」を感じていたのです。

 

しかし同時に、作品に見え隠れする不穏の影や闇の深さにより最終回に不安な気持ちを抱く視聴者も少なくありませんでした。「もしかしたら、ここで一気にそうした伏線が回収され、とんでもないバッドエンドが待ち受けているのではないか?」という不安が最大限に煽られていたタイミングだったと言えるでしょう。

 

こうした現象は「優しい世界観」と「謎と伏線」を両立させたけものフレンズならではのものですが、制作陣が意図したものではなかった(仮に意図したとしても想像以上の効果があった)のではないでしょうか。

 

ニコニコ大百科には、この時点での視聴者の反応を示す記事が存在します。

 

http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%91%E3%82%82%E3%83%95%E3%83%AC11%E8%A9%B1%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF

 

この11話放映後、ツイッターではワールドワイドトレンドの9位に「かばんちゃん」がランクイン。日本のトレンドにおいては約15時間に渡りトレンド上位を独占し、さらには実況ツイート残留率892%の実況ユーザ数過去最多の記録[1]を残した。

第四段階:最終回で視聴者に一体感が生まれる

11話が終了した時点においては、物語の展開はこうした視聴者の期待を完全裏切る方向へと進んでいました。11話のラストシーンが「かばんちゃんがセルリアンに食べられる」という衝撃的なものだったからです。そのため、ただでさえバッドエンドを恐れていた視聴者たちの不安感はさらに煽られる形になりました。

 

「たつき監督を信じろ」

この傾向を非常によく表していたのが、ニコニコ動画のコメントやSNS上で盛んに発信された「たつき監督を信じろ」というスローガンです。以下のリンク先に詳しい解説があります。

 

http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%9F%E3%81%A4%E3%81%8D%E7%9B%A3%E7%9D%A3%E3%82%92%E4%BF%A1%E3%81%98%E3%82%8D

 

2017年3月22日、地上波放送において「けものフレンズ」の11話が衝撃的な結末で終わった。(詳しくはけもフレ11話ショックを参照)
その内容に放送直後からファンの間には激震が走り、彼らを様々な行動へと駆り立てた。

 

これまで丁寧に話を積み上げてきたたつき監督の手腕を信じ、決して悲しい結末には終わるまいと、たつき監督を信じて静かに最終話を待つ事と決めた。

 

このように、11話ラストの衝撃的な展開を受けて、多くの視聴者たちはまるで祈るような気持ちで最終回を待ちわびていたのです。そして、「最終回の展開を予想するツイート」や、「最終回を前にした不安な気持ちを吐露するツイート」などが飛び交い、その過程で多くの視聴者は一体感を強めていったことでしょう。

 

私はけものフレンズが一過性のブームにとどまらず、現在にまで続く根強い人気を保つことができたのは、この段階において視聴者の心理的な一体感が強く醸成されたからだと考えています。ストーリーが面白い作品や、キャラクターが魅力的な作品が人気を集めることは少なくありません。しかし、それだけでは人気が高まっても、一時的な流行にとどまってしまいます。

 

ここで、自分の子供の頃を思い出してみてください。誰でも「その世代の人ならみな知っている」というほど、大きなブームになったものをいくつか思い浮かべることができると思います。

 

そうしたコンテンツは、その中身が素晴らしかったことも間違いないでしょうが、「みんなでそれに夢中になっていた」という「思い出」が必ず付随しているはずです。単なる人気のコンテンツが流行(ブーム)となって時代に足跡を残すためには、そうした思い出を生み出す土台となる「人々の一体感」が必要なのです。けものフレンズに関して言えば、最終回近辺の視聴者の想いの高まりによって、その要件を満たすことができたといえるでしょう。

 

まとめ

以上が私が考える、けものフレンズに人気が出た理由です。個別の要素に関しては、今まで出てきた情報をまとめただけなので、真新しいものはなかったかもしれません。ですが、人気が出ていく過程の流れを時系列的に整理することはできたと思います。

 

「優しい世界観」という表面と「謎と伏線」という裏面が一体となって、徐々にファンを増やしていったこと。そして、最終回の前後でファンたちの思いが一つとなり、大きなムーブメントを作り出したことが、現在にまで続くけものフレンズの人気を生み出した大きな要因だと思います。

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コンテンツの魅どころ

Webライター・マーケティングコンサルタントとして活動しています。実務を通じて学んだマーケティングに関するノウハウや最新情報をわかりやすく提供していきたいと思っています。 また、時事に関わるニューズをマーケティング・ライティングといった切り口から解説してみたいと思います。

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