「BANクラまとめ」その39:ネザー探検と大佐のサトウキビ畑

2019年1月12日~1月15日にかけて行われた72時間耐久マインクラフト実況「BANクラ」の見どころを順番にご紹介するシリーズです。今回は、1月14日12:00ごろ~14:00ごろまでを取り上げます。 ... 続きを読む

「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(3/3):ローカルなコミュニティの人間関係

ヤンキーの「お前どこ中だよ」という問いかけと、田舎で初対面の人と出会ったときの挨拶に見られる共通項を解説するシリーズです。サンプルとして、アニメ「氷菓」のワンシーンを取り上げています。   本コラムは3記事に分かれています。前半はこちらからご覧ください。
「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(1/3):ヤンキーの問いかけの真意
「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(2/3):アニメ「氷菓」のワンシーンから

登場人物の表情に見える「田舎者の苦悩」

すでにご説明したように、こうした田舎特有の人間関係の構築方法は、田舎で生まれ育った人であればある程度感覚的に理解することができるはずです。しかし、都会で生まれた方にはなかなかわかりにくい部分があるかもしれないので、いくつか補足しておきたいと思います。  

まるで外国語で挨拶されたようなリアクション

まず、おじさんが最初主人公をいぶかしんだのは、主人公の風体を怪しんでいたからではありません。おじさんにはまったく悪意はないのです。単純に田舎では初対面の相手と出会ったとき、「血縁・地縁のピラミッド」をまず確かめるというコミュニケーションの流れが一般的なので、それとは違う方法で挨拶してきた主人公の言葉を理解するのに時間がかかっていたのです。  

「田舎の自己紹介」に反発心を持つ主人公の葛藤

次に、おじさんのリアクションを見た主人公が、ヒロインの名前を出すシーンについて補足します。「血縁・地縁のピラミッド」をベースにしたコミュニケーションの方法は、田舎では一般的な方法ではありますが、すべての人がこうしたやり方を好んでやっているわけではありません。   中には今回の説明を聞いて、特に都会で暮らしてきた人々の中には「相手の人格ではなく、血縁や地縁を聞いて接し方を決めるなんておかしい」と感じた方もいるでしょう。田舎にもそのように感じる人がいないわけではありません。こうした「血縁・地縁のピラミッド」に基づいたコミュニケーションの方法をとるのは高齢者が中心で、若い世代になるほどあまりそうした部分を重要視しない人が増える傾向にあります。   主人公の奉太郎もそうした若い世代のひとりです。彼は、都会の人に近い感覚で最初の挨拶をしたのですが、相手にそれがうまく伝わりませんでした。そこで、仕方なく自分が快く思っていない「田舎のやり方」に合わせて「共通の知り合い」の名前を出したわけです。  

余計な手間をかけたことへの謝罪

最後に、ヒロインの家の名前を聞いたおじさんが「すまなかった」と謝るシーンについて補足します。このおじさんの「すまなかった」には、2つの意味が込められています。ひとつ目は、「(ちゃんとヒロインから代役が来るという話は聞いていたのに)すぐ気づかなくてすまなかった」という意味です。こちらは非常にわかりやすいと思います。おそらく、放送時も多くの人はこのシーンのセリフをそうした意味で解釈したことでしょう。   もうひとつの意味とは「(『どこ中か』わざわざ名乗らせて)すまなかった」という意味です。すでに述べたとおり、主人公は最初の自分の説明がおじさんにうまく伝わっていないと気がつき、その時点でヒロインの名字である「千反田」という名前を出しました。   ですが、本来であればこれはおじさんのほうから「どなたのお知り合いですか?」と聞かなければならない部分です。主人公の方は、伝える必要がある情報は伝えているわけですから、なにか引っかかっている部分があるのなら、おじさんのほうから聞き返すのが本来の流れです。実際、ヤンキーの問いかけにおいても「どこ中だよ」と尋ねるのは気になった側で、相手から聞かれるまで自分の方から「どこ中なのか」名乗るようなことはしません。   なのでおじさんは「わざわざ自分の心中を察して、知り合いの名前を出してくれてすまなかった」と言っているわけです。  

ローカルなコミュニティでは、争いを避けるのが第一

今回は、ヤンキー同士が出会ったときの常套句と、田舎での挨拶に見られる共通点についてご紹介していました。ヤンキーと田舎の地域社会、これらに共通しているのはどちらも「ローカルなコミュニティ」である点です。   ごく狭い地域で人間関係を築く場合、最も大事なのは「喧嘩をしない」ことです。喧嘩や争いが起きれば、お互いに禍根が残ります。広い地域なら、「喧嘩をした相手とは二度と合わない」、「遠くの場所へ移動する」といった選択肢もありますが、狭い地域ではそうした行動を取るのが難しい場合も珍しくありません。   従って、喧嘩や争いを避けるために最初から相手と自分の立場を決めておき、「下位の者が、上位の者に従う」というルールを決めておくのが最も効率的であるということになるわけです。あとは、その狭い地域の関係者の立場・関係をすべて記憶しておけば、争いが起きる心配はなくなります。   例外なのが、「別の地域に属する人がやってきた場合」です。この場合は、地域に住む人々と相手との関係性が決まっていないので、状況次第では争いが発生する危険があります。だからこそ、地域内で未知の相手と遭遇した場合は、一刻も早くその相手が「どこ中か」を確認する必要があるわけです。   今回は、こうした「ローカルなコミュニティ特有のコミュケーションの取り方」について解説してきましたが、それ自体の是非については特に論じていません。「初対面の相手を、人間関係のピラミッドのいずれかに配置する」というやり方に対して、心理的に抵抗がある人もいるのではないでしょうか。実際、こうしたコミュニケーションの方法が、田舎の地域社会に悪い影響を与えていることもあるでしょう。   しかし、ネットや流通の発達によって、現在ではあらゆるローカルなコミュニティのグローバル化が進んできました。「狭い地域」が「広い地域」になることによって、コミュニケーションのやり方が変わっていくという可能性もあるのかもしれません。   [amazonjs asin="4044271046" locale="JP" title="遠まわりする雛 (角川文庫)"]... 続きを読む

「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(2/3):アニメ「氷菓」のワンシーンから

ヤンキー同士が出会ったときの常套句として知られる「お前どこ中だよ」というセリフ。実はこれは、見慣れぬ相手との余計な争いを避けるためのコミュニケーション方法でもあります。   これとまったく同じ意図を含んだコミュニケーションの方法が、田舎のコミュニティにも紹介します。アニメ「氷菓」のワンシーンをサンプルに両者の共通項をご紹介していきたいと思います。   本コラムは3記事に分かれています。前半はこちらからご覧ください。
「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(1/3):ヤンキーの問いかけの真意
 

「氷菓」に見る「田舎で初対面の人と会ったときの会話」

ご紹介するのは、テレビアニメ「氷菓」の22話「遠まわりする雛」での描写です。同作品は、米澤穂信の推理小説「〈古典部〉シリーズ」を原作として、2012年に放送されたアニメーションです。2017年には実写映画化もされているため、記憶に新しい方もいるかもれません。   https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E3%81%BE%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%81%99%E3%82%8B%E9%9B%9B   本作の舞台となる場所のモチーフになったのは、岐阜県高山市と言われています。高山市といえば「飛騨の小京都」という異名を持つ昔ながらの町並みが有名で、都会か田舎かといえば「田舎」に分類されると言っていいでしょう。   問題のシーンは、主人公の奉太郎がヒロインのえるから地域のお祭りの手伝い(怪我人の代役)を頼まれ、準備会場を訪れた直後の場面です。具体的にどのような描写がなされたのかご紹介しましょう。  

アニメ「氷菓」22話 主人公がお祭りの手伝いに行くシーン

1.準備会場を訪れた奉太郎、お祭りの責任者のひとりと思われるおじさんを呼び止め、「頼まれて代役に来た」と伝える。 2.おじさん、いぶかしがるような目で奉太郎を見て、返答せず 3.奉太郎、「千反田(ヒロイン)から聞いていませんか?」と再度尋ねる 4.おじさん、「ああ、そうかすまなかった」と答え、奉太郎を迎え入れる   ここで注目してもらいたいのは、主人公は最初から自分が何者なのかも、頼まれて手伝いにやってきた旨も伝えているにもかかわらず、おじさんは返事をせず、いぶかしがるような目で主人公の方を見返してきているという部分です。意図がなければこのようなシーンを入れる必要はないので、制作陣は明確な意図を持ってこれらのシーンを描写したことになります。   その後、主人公は何かを察したような表情を見せた後、自分に怪我人の代役を頼んだヒロインの名前を伝えます。おじさんはようやくその時点で「ああ!」と思い出したように返事をして主人公を迎え入れています。   実は、この構図はヤンキーの「お前どこ中だよ」とまったく同じコミュニケーションの流れなのです。

田舎には血縁・地縁をベースにした「人間関係のピラミッド」がある

最初のヤンキーについての説明で述べた通り、ヤンキーたちは地域ごとに異なる「人間関係のピラミッド」によって秩序を保っています。同じ地域に属する知り合い同士が、学校の先輩後輩、兄貴分と舎弟といった関係性で結ばれ、ひとつの共同体を形成しているのです。   こうした秩序の保ち方をするのは、何もヤンキーだけではありません。田舎に住む人々の中にも、その地域特有の「ピラミッド」を人間関係構築のベースにしている人は多くいます。もちろん、彼らのピラミッドはヤンキーのようにお互いの力関係だけで結びついているものではないのですが、「人間同士の縁による結びつき」をコミュニケーションの基準として捉えている、という点が共通しています。   ヤンキーの「ピラミッド」において、人と人を結びつける要素は「学校」でした。学校という共同体が存在するからこそ、ひとつの地域に住むヤンキー同士が集まる機会が生まれ、そこで先輩・後輩といった上下関係が醸成されていくわけです。   一方、田舎の人が使う「人間関係のピラミッド」において人々を結びつける要素は、基本的には「血縁」です。田舎の場合、人々の行動範囲が限られるため「先祖を数代前まで遡れば何らかの血縁関係がある家」は無数にあります。たとえば、「ひいひいおばあちゃんの実家」といった具合です。はっきりいって、それくらい遠い関係になるともうお互いの家同士は「親戚」とは思っていないケースも少なくありません。とはいえ、特に高齢者を中心に、そのくらいの遠い血縁であっても「仲間」という意識を持っている人も多くいます。   この血縁に、補助的な要素として「地縁」が加わります。最もわかりやすい例は、「どこ中」と同じく「同じ地域、もしくは近くの地域に住んでいる人=仲間」と捉える感覚でしょうか。たとえ近くに住んでいなくても、自分の知っている地域に住んでいるかいなかによって、相手への親近感が変わってくると感じる方は少なくありません。   こういった感覚は、田舎で生まれ育った人であれば「あるある」と理解できるかもしれませんが、都会生まれ・都会育ちの方にはなかなかわかりにくいのではないでしょうか。   ヤンキーの「お前どこ中だよ」という問いかけには、次の3つのプロセスがあると説明してきました。   1.相手が初対面の人であることを確認する 2.出身中学を尋ねる 3.共通の知り合いがいないか確認する   では、このプロセスと先程ご紹介した氷菓のシーンを照らし合わせてみましょう。  

1.準備会場を訪れた奉太郎、お祭りの責任者のひとりと思われるおじさんを呼び止め、「頼まれて代役に来た」と伝える。

最初、主人公は来訪の目的を伝えているのに、対応したおじさんは警戒を解いていません。普通に考えれば「ちゃんと自分が何者で、なぜやってきたのか伝えているんだから、答えてあげればいいじゃないか」と思うところですが、実はおじさんは主人公が何を言ったかなどあまり頭に入ってはいません。  

2.おじさん、いぶかしがるような目で奉太郎を見て、返答せず

主人公が語った、氏名や来訪の目的といった情報は、田舎で初対面の相手に出会った際、さして重要なポイントではありません。主人公が「初対面の相手」だったので、おじさんは自分の目の前にいる若者が「どこ中か?」=「この地域の共同体において、どの血縁・地縁に属する人間か?」ということを必死に考えていたのです。  

3.奉太郎、「千反田(ヒロイン)から聞いていませんか?」と再度尋ねる

ここで、主人公が一瞬何かを察したような表情を見せます。主人公も田舎で暮らしている人間ですから、おじさんがなにをいぶかしがっているのか大体の察しがつくわけです。その上で、おじさんが次に欲している情報である「共通の知り合いの名前」として、ヒロインの名前を伝えたのです。  

4.おじさん、「ああ、そうかすまなかった」と答え、奉太郎を迎え入れる

この時点で、ようやくおじさんの頭のなかで、目の前にいる若者を「ピラミッド」のどこにおけばいいかということがつながりました。おじさんと主人公は当然血縁はありませんが、ヒロインの家は地域では知られた名家なので「地縁」に基づいて主人公を「千反田家のお客さん」として脳内でピラミッドの一部に組み込んだのでしょう。   それでは最後に、描写から読み取れるこのシーンにおける主人公とおじさんの心情と、「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶から読み取れる共通項をご説明したいと思います。(3/3に続く)   本コラムは3記事にわかれています。続きはこちらからご覧ください。
「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(3/3):ローカルなコミュニティの人間関係
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「お前どこ中だよ」と田舎の挨拶の共通点(1/3):ヤンキーの問いかけの真意

知らないヤンキー同士が顔を合わせた際の常套句といえば、「お前どこ中だよ?」というセリフが有名です。Twitter上において、「実はこれは威嚇の手段ではなかった」というツイートが多くのリツイート・いいねを呼び話題になりました。   私はこのツイートを見たとき、「田舎にもこれとよく似たコミュニケーションの常套句がある」ということを思い出しました。今回は、テレビアニメ「氷菓」のワンシーンを取り上げて、ヤンキーと田舎に住む人のコミュニケーション方法の中に見る共通項を探っていきたいと思います。  

「お前どこ中だよ」は相手への威嚇ではなかった?

まずは、「お前どこ中だよ」について説明する必要があります。せっかくですから、Twitterで大きなバズを産んだ方の当該ツイートを確認してみましょう。  
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